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Directed and Produced by
純谷吉松(Itoya Kichimatsu)


■2000年11月のニュース一覧
▼[2000.11.30]春待つ街の言い伝え
▼[2000.11.29]たったひとつの冴えないやり方
▼[2000.11.28]蜘蛛恋の唄
▼[2000.11.26]こんなときだから極上のお伽話で
▼[2000.11.25]寒き苦悩の時
▼[2000.11.24]質問君と聖人さん
▼[2000.11.22]人間の最後の試行の場
▼[2000.11.21]確信としてのビット・テキスト
▼[2000.11.19]進化の姿,終わりの姿
▼[2000.11.18]ブラウジングこそ生活
▼[2000.11.17]未開の大地にひるがえりし旗
▼[2000.11.16]6の約束よ
▼[2000.11.15]風の街
▼[2000.11.14]差出人不明のメールからはじまる物語
▼[2000.11.13]永久機関への羨望
▼[2000.11.12]プレミアのないゲーム機の夜
▼[2000.11.11]あなたは,なにを脱ぎ捨てるのか
▼[2000.11.09]世界タービンを全速で回せ
▼[2000.11.08]スピード
▼[2000.11.07]なんのために,ハッキングするのか?
▼[2000.11.06]古びた机を捨てること
▼[2000.11.05]ワイヤード戦争論の序章
▼[2000.11.04]道半ば,道果てるまで
▼[2000.11.03]click, the fascinate tomorrow
▼[2000.11.02]禁断の果実の熟れた果肉
▼[2000.11.01]ワイヤードの果て,魂の古郷

■2000年12月のニュース一覧
■2000年10月のニュース一覧


 
[2000.11.30]
  春待つ街の言い伝え


 ▼セガが連日のストップ高へ、ソシエテ・ジェネラルのレポートが材料視される (Technobahn)
  http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read?f=200011291825


 季節はめぐる。終わらない冬はない。春のない冬はない。春を待ち,厳しい冬を耐えた者に,春は舞い降りる,まるで,偶然のような,まるで,奇跡のような,優しさで。

 セガ社の株価は,前日に続いて今日もストップ高の終値1,055円となった。ソシエテ・ジェネラル証券社のレポートで投資判断を引き上げる可能性に言及していることが材料視された。新経営陣への期待も広がっている。

 『その北の街に,春は1週間しかない。長い長い冬が終わると,暖かな日差しの春が1週間だけやってきて,そしてまた,冬に舞い戻ってしまうのだ。限りなく北極に近いこの街では,その1週間の春以外はずっと冬…。だが,それでも人々は春を待ち望んでいる。春が来ると,お弁当を作って木枯らしの吹かない丘で遊び,クロケットに似た球技に興じる。そしてその1週間を心から享受し,いつもの冬を迎える。また1年近い厳しい冬を,迎える。

 この街の言い伝えに,「冬を嫌うものに春は来ない」,というのがある。冬を懸命に生きる者にこそ,春は来る,というのだ。たとえそれが,たった1週間しかない春であっても』。…セガは新型ゲーム機を出すだろうか?(Technobahnの記事) 私の勝手な思いでは,現行ドリームキャストのアップデート以上のことをするメリットはない。動くほどに首を締めつけられるほどの経営状況であるが,まだその時期ではない。ただアップデートするにしろ,価格維持が優先される。モデムのスピードアップやDVDビデオ再生機能の追加などが考えられるが,大した意味は持たない。ドリキャスにフォーカスしている開発会社も,後継機など期待していないだろう。ドリキャスの満足感はそれだけ強いということを,経営陣はもっと知るべきだ。終わらない冬はない。懸命に冬を生きる者に,春は訪れる。




 
[2000.11.29]
  たったひとつの冴えないやり方


 ▼「Windows Media Player 7」のセキュリティ欠陥(シリコンバレーエクスプレス)
  http://www2.nihon.net/cgi-bin/sve/osform/SVERead?osform_template=Brows_body.oft&pDate=001128&Id=01


 今年のクリスマスプレゼントは,深紅のイブニングドレスのように,着飾ったプレイヤー・スキンを。ちょっと冴えないやり方だが,僕にできる最大限のスクリプトを織り込んで,聖夜の夜は,君と。

 GFI社は,マイクロソフト社の「ウインドウズ・メディア・プレイヤー」内のセキュリティー欠陥を発見した。悪意を持った他人が,離れたところにある複数のマシン上で勝手なコードを走らせることができる。メディア・プレイヤーのスキン・ファイルにスクリプトを埋め込み,セキュリティー欠陥を襲う。

 MSのセキュリティー告示はここ。記事にある欠陥部分は,2つ目のもので,メディア・プレイヤーのスキンファイル(.wmz)かダウンロードファイル(.wmd)にスクリプトを仕込み,あとはメディアプレイヤーが勝手にアクティブXのコードを実行してくれる。んでもってそのコードが,結構なんでもできるものまで実行してくれる。はっきり云ってなんでもあり。なんでスキンの中にスクリプトを書けるのですか〜という疑問は,持ってはいけない。仕様だから(^_^)。

 exeファイルは添付されてきても絶対実行しないようになんて云っていても,メール本文をみただけで実行されるこのWMZ死刑宣告のようなのもある。アプリケーションの実行やファイルの改ざんなども可能になるため,ウイルス作家さんたちにはなんでもしやがれ状態なので,楽しみも多いだろう。クリスマス前には,ただでさえウイルスは活性化する。みんな浮かれるわけぢゃないだろうが,この季節は被害がひろがりやすい。そんなときには,あんまり冴えてないやり口の方が効果的だったりする。外観を装うためのスキンが選ばれた瞬間に作動するなんて,なんとも冴えないやり方だが,そのあとの効果は絶大。クリスマスには,特製スキン(チキンぢゃないよ)で,迎えてもらおうか。




 
[2000.11.28]
  蜘蛛恋の唄


 ▼BIGLOBE、Googleのエンジンを利用した新検索サイトを開設(Impress INTERNET Watch)
  http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2000/1127/biglobe.htm


 博物学者のウイリアム・ヘンリー・ハドソンが書いた小説「緑の館」には,蜘蛛の糸で作った服を纏いし少女,リーマが出てくる。森に住む魅惑的な彼女は心惹く存在だ。…ワイヤードの中,僕は彼女のかすかな匂いを察して,糸を辿る。そして気付く,この世界に偏在する,彼女の姿を。

 NEC社は,新しい検索サービス「ビッグローブ・サーチ」を開設,その検索エンジンにグーグル社のエンジンを採用した。検索結果はグーグルで検索した場合とほぼ同一のものとなり,それに現在NEC社が運営している検索サイト「ネットプラザ」の的中サイト機能を付加する。

 検索エンジン,なにをお使いだろう? 9月に日本語ページも設置したグーグルは,やはり評判がいい。というか,自分がいちばん使っているのもグーグルになっている。フレッシュアイでニュース系の記事を漁る以外は,グーグルですんでしまう。他の検索エンジンの結果と比べても,目的の情報にたどり着きやすい。米国ヤフーが,それまでのインクトミ社のエンジンからグーグルのエンジンに切り替えたように(WIRED NEWSの記事),利用者の調査結果で98%の利用者が満足な検索結果と評価しているように(Impress INTERNET Watchの記事),しなやかな検索結果は,「肌に合う」感じをうまく出している。

 ウェブを蜘蛛の巣と表現し,検索エンジンの情報収集を受け持ち各サイトの情報を取得してくるロボットをスパイダーと云う。糸はリンク,私たちは自ら蜘蛛となって,その糸をたどり,獲物(情報)を捕獲し,生活する。蜘蛛にとって糸は,捕獲のための網でもあるし,家ともなる。生んだ卵を包み込むことにも使うし,糸を吹き流して空を翔ることもできる。検索エンジンを利用し,自らのキーワードに「振れた」場所へと瞬時に移動していく実感は,とみに蜘蛛の巣の上を辿り進む姿と重なる。自らの吐く糸よ,地の果ての彼の人へと達せよ。




 
[2000.11.26]
  こんなときだから極上のお伽話で


 ▼セガ,コンシューマ事業の先行投資と価格政策の変更などで324億円の最終赤字転落(ZDII)
  http://www.zdnet.co.jp/zdii/0011/24/hn_005.html


 「これよりセガは,ゲーム業界を制圧する!」という人交(ひとまじり)社長のもと,極秘プロジェクト「セガガガ」が進められ,栄光のシェア100%を目指す。…しかし,「ゲームハードはこれで決まり,という時代にはならない。みんなそれぞれの路線を行く形になる」(小口氏)。セガガガは,ゲーム業界の,そしてゲームユーザーのお伽話でしかない。だが,今,このときのゲームだからこそ,上質のお伽話が必要なのだ。

 セガ社の9月中間期連結決算は純損失324億円の赤字となった。ドリームキャストの販売台数は世界で587万台,ネットワーク登録者も世界で155万人と増えたが,欧米でのドリームキャストの価格引き下げが影響。下期はネットワークゲームの発売が控えており,黒字を目指している。

 昨日の記事に続いて暗い話になるかというと,そうでもない。今発売されているドリームキャストマガジン誌はとてつもなく面白かった。「ファンタシースターオンライン(PSO)」を手がけるソニックチーム社社長の中氏と“あれ”を作るヒットメーカー社社長の小口氏の対談,ネットワーク対戦ができる「NFL2K1」の記事,んでもって,“あれ”である「セガガガ」(^_^;)の記事。

 すでに時は変わっているのだということを,私たちは実感できずにいる。あのとき,セガサターンは国内で370万台売れ,「バーチャファイター2」は170万本を売りさばいた。発売から2年経ったドリキャスは現在,国内で195万台にとどまり,いちばん売れたソフトも「シーマン」の53万本だ。これは別にセガに限った話ではなく,任天堂もソニーも,現状の有り様は一緒。ソフトウェア企業も,小さなところは消えていくし,大手の営業成績は目も当てられない。でも,気持ちとして,あの時のゲームに対するムーブメントが終わっていないような気でいる。だが,「ソフトを一生懸命作っても,かわいそうなぐらい儲からない」(中氏)時代,すでにその一番の深みにある。なのに,不思議なことにドリキャスのソフトにその懸念はない。まだ誰も体験したことがない世界を構築するPSO,ゲームハードシェア制圧を,“あの”セガが成し遂げるセガガガ。良質のお伽話が人の幸せの道標となるように,セガ開発分社のソフトは極上のお伽話となっている。とりあえず,羽田(^_^;)弥生ちゃんに,ふにゅ〜んヽ(´ー`)ノ(ってそういうゲームぢゃねぇ)。




 
[2000.11.25]
  寒き苦悩の時


 ▼Mockups: iMac, PowerMac G4 and Cube 2.0(Go2Mac)【英語】
  http://www.go2mac.com/displaynews.cfm?newsid=7607


 すべては苦悩に彩られている。寒風が吹きつける。キューブは,一生食べていけるような最高級のパソコンだが,それとて苦悩を引き連れている。課せられた課題は,至高のデザイン,至高のパフォーマンスを発揮して,この苦悩を捨てること。この冬の寒さに,熱い情念は,ありや?

 ウェブサイト「Applele」の新種林檎研究所が,架空のアップル社製品の3Dモックアップを展示している。以前,Go2Macでは,同サイトのPowerfulBookとHiBookも掲載した。このhiMacとhiMac DVは,iMacの後継機としてとてもクールだし,PowerfulMac G4 BookとPowerfulMac G4 Cubeはアップルがビジネスマシンに注力するのに重要だ。スティーブ・ジョブズとジョナサン・アイブは,この製作者をすぐにも雇うべきだ。

 アップルはパワーブックに続いて,マルチプロセッサG4を値下げ(Mac Fan netの記事)。抱えた在庫処理を促進させている。日本は米国ほどのダブつきは感じないが,それでも7月下旬のニューモデル出荷前のモデルが,まだ店頭でみられる。4ヶ月前にさばききって欲しかった機種がまだあるというのは,やはり問題と考えていい。徹底した在庫管理で店頭にものがないと苦情が頻発していた1年前と,大きくなにかが変化しているのは確かなようだ。

 現在アップルでは,新型ノートと廉価版キューブの詰めの作業をしている,というのが大方の予想。だが,ともに難航がうかがえる。アップルにとってiBook以外のノートパソコンのプロダクトデザインは,基本的には1989年のパワーブック100から変化がない(こまかな変化はいくつもあるけど,大枠は変化ない)。iBookほどの劇的な,なにか,を待ちながらも,98年8月のiMacデビューから始まったジョブズによるプロダクトデザイン変革にあって,プロフェッショナルノートは唯一残された未踏の地である。そこにある苦悩。ここまで踏み込めずにいるのは,なにか大きな原因があるのだ,きっと。そしてキューブの思想と価値を持ち合わせる廉価モデルを作る苦悩も,察しがつく。Appleleのデザインは,アイブのものとはやはりかけ離れているのが感じられるが,さて,あと1ヶ月ちょっとしかない。正月開けのマックワールドエキスポ/サンフランシスコ。発表はそこである。目を見張る製品は,待っているのか。…待っていたい。




 
[2000.11.24]
  質問君と聖人さん


 ▼「goo」がユーザー同士による質問回答サービス「教えて!goo」を開始(NetLife Internet News)
  http://www.zdnet.co.jp/netlife/news/0011/22/07.html


 見知らぬ人の質問に答え続ける。見返りもない。感謝もされないこともある。自分を成長させる糧にもならないことの方が多い。でも,そういう人が一人いると,場の雰囲気が全然変わるから不思議。

 検索サイトのグーは,マンパワーによる質問回答サービス「教えて!グー」。これは,ユーザー同士がお互いに質問回答を行うサービス。質問したユーザーには回答があると,メールで通知もされる。

 こんなサイトができたら教えて君があふれちゃって大変ぢゃないか,って,最初からそういう趣旨のサイトだからいいんですな(^_^)。普通の掲示板では忌み嫌われることもある質問だけする質問君もここなら安心。

 んでもいつも気になるのは,そういう掲示板で,この人は賢人なのではというくらい豊富な知識を持っていて,この人は聖人なのでは(^_^;)というくらいくだらない質問にも懇切丁寧に答え続けている人がいたりすることだ。茶化が入っても気にしないし,お礼がなくてもなんともない。そんな人がたまにいる(私は海外のアングラサイトなどで,幾人かそんな人を知っていますが,あきれるくらい感心しますな)。そんな人の存在を,不思議だなぁ,なんでこんな面倒なだけのことができるのかなぁと,人間のできてない私は思うのでした(^_^;)。「教えて!グー」にもそんな人がたくさん集まってくれるといいねぇ。




 
[2000.11.22]
  人間の最後の試行の場


 ▼Yahoo!,ナチス問題で敗訴。eBay,Amazonの対仏外交に学べ?(ZDNet News)
  http://www.zdnet.co.jp/news/0011/21/e_france.html


 彼らは云うだろう。「ネットワークが人間を堕落させ,戦争を起こさせ,そして世界の終わりを近づけた」,と。「だが」,と彼は云った。「それはもともとの人間の姿だっただけだ。ダメだったのであれば,それだけの存在でしかなかっただけだ」。

 フランスの裁判所は20日,ヤフー社に対し,フランス国内のユーザーに対し,ナチス関連商品の販売を中止する対策を講じるよう命じた。ヤフーの弁護士は「解決できない本質的な問題」があるとしている。イーベイ社アマゾン社では,いくつかの策を講じて,同様の問題を回避している。

 いちおう,ヤフー・アメリカは合衆国の法律を準拠法としてるはずだが,無知な裁判官にそんなことを云ってもはじまらない(過去記事)。もし,ナチスの関連商品の売買が悪である,とするのであれば,いちばんに責められるべきは商品を購入したフランス国の人間である。国際法にその商品売買を禁じるものはない。各国に守るべき法があり,各地域に守るべき規則があり,各民族に守るべきルールがあり,各人が持つ規範もあろう。この世界は,そのすべてを尊重はするが,どれにも束縛を受ける必要はない。私は,そう考えている。

 人間は,ネットワークという場で,試されて,いるのかもしれない。国家や民族というカテゴリーのない世界。違う主義の人間がすぐ隣にいて,違う宗教の人間がすぐ隣にいて,違う思想の人間がすぐ隣にいる。言葉を交わし,商品の売買をし,お互いの情報をどん欲に漁ることができる。いがみ合うことも,憎しみ合うこともあるかもしれない。国家も,法律も,宗教も,なにもよりどころがない,なににも束縛されるものがない世界で,人間同士は,うまくやれるのか,やれないのか。…私たちは,誰か,に,試されているのかもしれない。




 
[2000.11.21]
  確信としてのビット・テキスト


 ▼紙のノートからメッセージ送信が可能に(WIRED NEWS)
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20001116301.html


 「紙に書いたことをパームにも入力しておけよ」という上司。「もう入力されています」という部下。別の上司がさらに声をかける。「だったら最初からパームに入力したらどうだ?」。

 アノト社は,書かれた内容をワイヤレスでPDAに転送するデジタルペーパーを開発,事務用品メーカー9社の紙製品に組み込む予定を発表した。このデジタルペーパーは,紙自体が情報内容がなんであるかを識別し,ペンは,ペンの動きを記録,それをムービーに変換,そしてパソコンやPDAへの送信という作業を行う。

 たとえば,紙に書かれたテキストを読むのと,モニタでウェブのテキストを読むのと,どちらが簡単に頭に入ってくるか(過去記事)。パームに直接入力するのはちょっと大変だとしても,モニタを見ながらキーボードをたたくのと,紙にボールペンを使って書くのと,どちらが自分の意志を簡単にまとめられるか。それは「慣れ」の問題か? 「素質」の問題か?

 いつから紙に向かってペンを持つということをしなくなったんだろう…,いつから紙の上の文字を読むよりもブラウザの中の文字を追いかけるようになったのだろう…,と振り返ってみる。この気持ちをまとめるには,この考えを結合するには,この空想を形にするには,以前はペンと紙とを持っていたのに,今はキーボードを打ち,それがエディタに表示されていくのを見て,というスピードが,思考の形となっている。紙に書かれたものを読み進めるよりも,モニタ上のアンチエイリアスされたbit textを,左から右に追っていく方が頭に入ってくる。これは慣れてしまったということなのか? それとも,生まれる前から持っていた「思考」を形にするいちばん楽な「指」と「手」なのか? 紙は,もう必要なものぢゃない。モニタに映る文字,指先がキーボードをたたくことによって生まれてくる思考…。最初から,これ,だったんだという,確信にも似て。




 
[2000.11.19]
  進化の姿,終わりの姿


 ▼次第に威力を増す「低リスク」なワームが登場(CNET Japan)
  http://japan.cnet.com/News/2000/Item/001117-5.html


 僕は世界の終わりを望んでいた。望むのは簡単で,実行するのはもっと簡単だ。だから,そこに,至るまでの姿は,美意識を刻むにふさわしいものでなくてはならない。大切なのは,その過程。その結果までの哲学だ。

 「ハイブリス」と呼ばれるワームは,今のところ比較的無害だが,暗号化されたプラグインをダウンロードし,自身をアップデートすることができる。それにより危険なものに変貌する可能性がある。プラグインはRSA 128ビットで暗号化されており,今までのウイルスのコードよりもっとも複雑で洗練されている。

 被害形式をプラグインで撹乱していく,と云うことも可能だ。各ウイルスメーカーが,このウイルスに感染すると「こういう」被害があると解説しようにも,「こういう」が変化し,その「こういう」は,果てることなく変化させられる。そして,感染方法も,いかようにも変化させることができる。今はスパム的にニュースグループへの自己プラグインを投稿するのが被害となっているが,下手なプラグインがアップロードされたら,致命的な被害と,爆発的な拡散方法を,ウイルス自らが入手し,実行することになる。

 自らを進化させるウイルスというのは,すでにいくつか存在するが(過去記事),進化の選択肢が(プラグインが作り出されるかぎり)無限というのは,興味深い。「社交術」があまりないと記事(ZDNet Newsの記事)ではあげられているが,なら拡散方法をアドオンすればよい。すべての送信メールに添付するとか,表示したウェブサイトに書かれているmailtoアドレスを保持し,そのメールアドレスに一斉送信とか。足りないものを補う,というのは簡単な進化の形だ。終わりの姿にたどり着くにしても,その過程はいくつもある。BIOS,またはOSの低層部分にアクセスするプラグイン,ファイルをしらみつぶしに破壊していくプラグイン,アンチウイルスソフトの動作にループをかけるプラグイン(薬はいつも毒になりえる)。…進化の果てはひとつじゃない。世界の終わりを望むにしても,その道筋はいくつもある。そして,終わりの姿も,ひとつじゃないから,進化の形を無限に持つウイルスは,ステキだ。




 
[2000.11.18]
  ブラウジングこそ生活


 ▼ウェブブラウザーの新しい形は「キュビズム」(WIRED NEWS)
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20001116304.html


 毎日のニュースの入手先も,大切な友人の消息を知るのも,大事な就職先を見つけるのも,彼女へのプレゼントを探すのも,全部全部,ブラウジング・ウインドウの中だ。「生活」は,ブラウジング・ウインドウの中にある,すべてある。それこそが,私の「生活」であるのだから。

 2Ce社は,キューブの内側の壁面にウェブサイトが表示されるようなブラウザ「2Ce」をコムデックス/秋展示会でデモしている。2Ceは,6つのブラウザウインドウを1つのウインドウで扱える。3Dウェブ・インターフェイスはこれまでも何度か試みられてきたが,2Ceはより自然で使いやすくなっている。

 2Ceのウインドウを見た瞬間(WIRED NEWSの画像),とても心動かされた。実際に使い物になるかというとならないと思うが,モニタという四角四面の切り抜かれた世界ではなく,ひとつの事象として,ウェブをとらえられる。求めている理念はタブ型ブラウザでもこなせるものだが,より直感的である点は,便利さとかそんなものよりも,感覚的にうれしくさせる。

 実際,仮想スクリーンが現実化したら,自分の目の前にこのようにブラウジング・ウインドウをいくつも配置し,そのひとつひとつをたぐり寄せ,遠ざけながら,次から次と泳いで行くことになろう。手のひらをかざすとその場所にスクリーンが開く,サイト名を口にすると,そのサイトが表示される。そしていつしか,そのウインドウは拡張を始め,私の身体を取り込んでいく。そこで,私たちは「生活」する。すべての生活は,ここにある,んだったら。(たとえば,こんな風景




 
[2000.11.17]
  未開の大地にひるがえりし旗


 ▼Macromedia,Mac OS X版の製品を準備中(MacWIRE ONLINE)
  http://www.zdnet.co.jp/macwire/0011/15/n_osxmm.html


 エベレストの山頂にひるがえりし旗,南極点にひるがえりし旗,月面にひるがえりし旗。さて,OS Xの大地に突き刺さる旗は,どれほどの風に靡くのか。

 マクロメディア社は,マックOS用のファイヤーワークス4とドリームウェーバー4を発表した。さらに,マックOS X版も準備中とのこと。その2つに加え,フラッシュ,フリーハンド,ディレクター,ショックウェーブなどすべての製品のOS X版を,OS Xが正式版となり次第,すぐにリリースする予定だ。

 マックOS Xの公開ベータ版を彷徨い歩いて,どれくらいたったのだろうか。ある意味では,もう何十年も使い続けたかのように動作が身体に刻み込まれてもいれば,まるで小学校1年生が算数の教科書を開いたようにたどたどしいときもある(オプションキーを押しながらメニューをおろすと「再起動」が現れるのも今日知りました(^_^;))。だが,改めて云う必要もないことだが,既存マックOSと比べて,ソフトウェアの不足,ドライバの不足は隠せない。クラシック環境でソフトは動くが,ドライバはいかんともしがたい。私の環境では,ビデオの入力や,サウンド入力ポートの使用,USB接続のCD-R,MP3プレイヤーのRioなどが使えないので,結局,OS 9で立ち上げ直す機会が多い。

 実際,OS Xは,そのフレキシブルさが,あまり大げさに売りにすべき点でもないのだが,売りにしても恥ずかしくない点でもある。クラシックは,立ち上げの時間をちょっと我慢すれば,まったく違和感なく過去の遺産を保ち続けられる。「あんなことにマシンの能力を使うなんて…」と誰もが思うドックの動きも,描画エンジンのクォーツの力をまざまざと感じさせ,サポート最低ラインのマシン(G3 MT233)でも,ストレスはない。それはそうなのだが…。やはりOS X対応のソフトウェアを待ちたい。それもできれば,カーボンではなく,ココア。マクロメディア,アドビ,クォーク,MSらは,既存アプリのカーボン化が目標となっているが,どの会社のソフトも,コードを1から考え直してもいい時期にきているソフトがいっぱいある。「私たちは,ココアでソフトウェアを作る」と宣言してくれる大手ソフトメーカーが現れれば,そこがこの新大陸で最初に到達旗を立てられる,と云ってもいい。それは金もかかるし,時間もかかることだろう。だが,マックユーザーはこれからとても遠い未来まで,この大地で生きていくのだ。そして,その旗が風に靡く姿は,その企業にとって大いなる,栄誉ともなろう。




 
[2000.11.16]
  6の約束よ


 ▼ネスケ6が世界中でデビュー!! Netscape Communicationsが正式リリース開始(MYCOM PC WEB)
  http://pcweb.mycom.co.jp/news/2000/11/15/08.html


 「ネットスケープ6の,約束のしじままで,一緒に行きませんか?」。歌う女神の纏足に心をうつしながら。

 ネットスケープ社は14日,ネットスケープ6の正式リリース版をリリースした。ブラウザは,オープンソースの「ゲッコー」を利用。CSS1,HTML4.0,DOM1,RDF,XMLなどをサポートしている。

 ♪ライマン・アルファの賢人より預けられし地図。そのフロック・モデムのデバッグ・プロトコルから,たゆたう約束の君を見つけた。気概はテッペン,損害は坩堝。口笛とヨーデルのまにまに,モジュールの切片を集めて,照らす夕べのインストールユニットよ。哀れが祈りの真実として昇華,昇天♪

 6章からはじまるストーリーが許されるのだとしたら,今,約束の地図は開かれたのだろう。大切なものに「ありがとう」という気持ちとともに,あまりにも長すぎた空白の時に失われたものを,悔いもしながら。だが,出会いの場所は,ここだったのだ。記憶の底よりも深く,身体に染みついた場所。驚異と敬意の扉は,破壊にも似た衝動で打ち破られた。いざ,約束の地へ「一緒に,行きませんか?」。




 
[2000.11.15]
  風の街


 ▼主役は携帯端末やネットワーク機器 様変わりのコムデックス(CNN.co.jp)
  http://www.cnn.co.jp/2000/TECH/11/14/comdex/index.html


 21世紀間近,21年目のコムデックス。大きなうねりがありながらも,その中心に吹く,ワイヤードへの風はやまず,とまらず,世紀を超える。いざ,風のたもとへと,歩みいかん。

 世界最大のIT関連展示会,コムデックス/秋が,ラスベガスで開幕した。今年はPDAや携帯電話,電子商取引ソフト,ネットワーキング機器などが主役として台頭。だがパソコンも忘れ去られたわけではなく,マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長は,「制約のない革新の時代へ向かっている」と基調講演を行った。

 では,今年のコムデックスの基調講演から,メモ書きψ(.. )。「究極のドット・ネット端末を紹介しよう。それが,タブレットPCだ」(ビル・ゲイツ,マイクロソフト社会長)。「パソコンにはもうMSオフィスとゲームしかない。そんなアプリなど書いていたら,死んだ会社と見なされてしまう。すべてのアプリはネットワーク上で稼働するのだ」(ラリー・エリソン,オラクル社CEO)。「私たちは,ネットワークによるデジタルルネッサンスの最中にいます。そしてそれは,数えきれないアイディアと発明による第2章へとさしかかっているのです」(カーリー・フィオリナ,ヒューレット・パッカード社CEO)。「パソコンは今でも主役だ。そして5年後にはサーバーの台数も5倍になる。すべてのパソコンはサーバーに通じるのだ」(マイケル・デル,デル社CEO)。(ZDNet News:COMDEX/Fall 2000特集

 様変わりしたと云っても,パソコンはもっとネットワークへの志向を顕著とし,PDAや携帯電話はネットワークへの砂塵を巻き上げることで,目を引いている。結局は,それを確認するためのコムデックスなのだ。数年前から吹き荒れているこの暴風は,吹き止む気配もない。進化を吹き飛ばし,リアルを吹き飛ばし,過去を吹き飛ばし,権威を吹き飛ばし,惰性を吹き飛ばし…。風に抗い進んでいく者たちは,多くのものが吹き飛ばされてきて,そして通り過ぎていくのを目にする。もし,風が吹き止んでしまったら,この地にはなにも残らないに違いない。だから,この風の街で生きていくしかなく,歩みをとどめてはいけない。それが,「生きる」ことと同義であると,感じながら。テクタイトでできた帽子のひさしを,目深に,落として,進む。




 
[2000.11.14]
  差出人不明のメールからはじまる物語


 ▼映画『コード』インターネット特別企画「被害者からの日記」
  http://www.junglegym.co.jp/cord/


 『ある満月の夜,僕のメールボックスにまったく知らない,あなた,からメールが届いた。それが,すべての,始まりだった』。

 ある片田舎の一軒家に,誘拐監禁されている一人の女性がいる。彼女は毎日,信じられない異常体験を強いられている。その彼女から,貴方にメールが届く。そんな企画が,12月公開の映画「コード」の宣伝として行われる。

 『そのメールには,「助けてください,あたしを,助けてください」と悲痛なまでの文面がしたためられていた。もちろん,僕は差出人のメールアドレスにおぼえがない。なにかの間違いかなと思って,そのまま削除しようかと思ったが,どうも気になった。あまりにも必死な,あまりにも悲愴感漂うその文面に…。僕は,返信を書いた。「私はあなたのことを知りません。メールアドレスを間違えられたのでは?」。数日後,同じメールアドレスから返信があった。「あなたに助けて欲しいのです。あなたが,あたしの唯一の,望み,なのです」,と』。

 『その後のメールによって,彼女が何者かに監禁されていることがわかった。僕は彼女の必死さに,いつしか心動かされていた。僕が彼女を助けなくては,と思っていた。そしてそのために,彼女が監禁されている場所を特定しようとした。珍しい鳥の鳴き声,遠くで聞こえる工場の音,頭上の窓から見える紅の旗…。わずかなパズルを解くようにして,僕はようやく,彼女の場所を特定できた。僕の住んでいる街から,10数km離れた小都市に,僕はその紅の旗があったのを思い出し,駆けつけた。あったこともないであろう彼女,どんな事件に巻き込まれているのかもわからない,そしてなぜ,僕がこんなことに首を突っ込んでいるのかもわからない。ここが,彼女のいる建物だろう。建物を見上げ,耳をすます。ふいに聞こえる女性の悲鳴。その瞬間,僕は鈍器のようなもので,後頭部を殴られ,気を失った』。…つづく(<つづかねぇよ(^_^;),あとは皆さんが勝手に続きを考えてください)。




 
[2000.11.13]
  永久機関への羨望


 ▼もう電源は不要!? 空気だけで充電を完了する驚異の携帯電話ホルダーが登場(MYCOM PC WEB)
  http://pcweb.mycom.co.jp/news/2000/11/08/11.html


 完全なコンピューティングを考えるなら,最小限の動作でエネルギーを創出し続けるものがなくてはならない。電源コードや,充電は,あまりにもスマートでない。できることならそこに,なんらかの永久機関があれば,完ぺきだ。

 マンハッタンサイエンティフィックス社が,メタノールと水を用い,空気と化合させることで発電するマイクロフュール・セルという技術で充電を行う携帯電話ホルダーを公開した。この燃料によって,携帯電話を1ヶ月間使うことができた。

 今週はもう1つ,SRIインターナショナル社が開発した歩行運動により発電を得るニュースもあった(ZDNet Newsの記事)。モバイル機器に省電力や新しい電力供給を,という動きは着実に進んでいる。トランスメタ社のクルーソーも含めて。……永久機関というシステムがある。すなわち,最初の動作を加えるだけで,あとはなんの燃料も与えず,なんの力を加えることもなく,永久に動作し,エネルギーを作り続けるというもの。風がなくても回り続ける風車や,燃料がきれても燃え続ける火があれば,その風力,火力によって無限に電力を創出できる。だが,現代熱力学では,エネルギーは,絶えざる力とその変位がないと生まれない,とされている。さらに,摩擦や抵抗で最初の動作は必ず消滅してしまう。そして,人間は,まだ永久機関を作り出せずにいる。人間の肉体という機械だって,物を食べるという動作と,そのあと,体内でエネルギーを作り出すための絶えざる作用があるのだし。

 もちろん,永久機関を発明したという話はあとを絶たない。永久磁石でエネルギーを取り出すジョン・サールの装置。モレイバルブにより得たエネルギーを増幅・共振させるヘンリー・モレイの装置。特殊なコイルで電気を増幅させるニコラ・テスラの装置。大気圧の変化でエネルギーを供給するジェームズ・コックスの装置。トンデモ系もあり,もしかしたらこれは…と思わせるものもあり,永久機関に寄せる発明家の情熱は,楽しい。マイクロフュール・セルは永久機関とはほど遠い。燃料のひとつとなる空気を「呼吸して」取り込むのに別の燃料を必要とする。しかし,その空気は,ほぼ無限と考えていい。21世紀には,22世紀には永久機関の発明があるだろうか。羨望は,やまない。




 
[2000.11.12]
  プレミアのないゲーム機の夜


 ▼「Memories Off 2」発売ハードアンケート実施中!(GAME SPOT JAPAN)
  http://www.zdnet.co.jp/gamespot/gsnews/0011/10/news07.html


 2年前のPCハードと,半年前のPCハードとの間にあるプレミアは,あまりにもはっきりしている。それはPCが,クロックスピードやハードディスク容量などの,そんなプレミアに絶対的な価値を置いているからともいえる。だが,ゲーム機の絶対的プレミアとは? 画面のきれいさ? ソフトの豊富さ? ネットワーク対応? それであなたは,ハードを選んでいるの?

 キッド社は,来年発売予定の恋愛アドベンチャー「メモリーズ・オフ2」を,どのハードで発売するか,ユーザーの意見を募集中だ。このソフトは,プレイステーションと,ドリームキャストで発売になっているソフトの続編。まだ発売ハードが決定していないため,ユーザーの意見を聞こうというものだ。

 と,いうか,投票数は最終的にはユーザー数に比例するような気がするだが,違うのだろうか。よもやプレステ2で,というようなゲーム内容ではないが。コメントの熱さを重視してくれるのだろうか? さぁ,ドリキャスユーザーの皆さま,想いを100万文字ぐらいに書き詰めて送ってみては? <やめとけ。なんとなく,反映されるようなアンケート結果になると思えなかったりなんかりだったりして。まっ,私としてはギャルゲー専用機への道を歩み続けるドリキャスに一票を(^_^;)。(どうでもいいですが,メモオフはこの記事この記事のパスティーシュ(またはパクリ)に使ってたりします。ああこりゃこりゃヽ(´ー`)ノ。)

 だが,よくよく考えれば,ゲームハードの競争というのは,よくわからない次元のものになっている。ぱっとしたゲームが相変わらずなくても,プレステ2は売れてしまっているし。たとえば,2年も前に出たドリキャストとプレステ2を比べて,プレステ2にあるプレミアはなんだろうか? DVDがみられる? 違う,そんなのはゲーム機の基準じゃない。ゲーム・キューブのプレミアはなに? Xボックスのプレミアはなに? 発表会ではいろいろと御託が並べられるけど,私たちがホントに「欲しい」と思うに値するプレミアはなに? 今はただ,イメージが先行しているだけで,ハードとしてのプレミアなんて,誰も気にするものぢゃなくなっている。ドリームキャストのライセンス化という話は(過去記事),そんな,プレミアなんてものは最初からない,という,諦念に似た姿勢とも感じられる。ネットワークというブレークスルーでさえ,PCやその他のネット端末の前ではプレミアでもなんでもない。ドリキャスでさえ,ハードとしてのネットワーク対応は,他の端末に大きく遅れている。ソフトメーカーにとってハードを選択する意味,そしてユーザーにとってハードを選択する意味が,たいしてない時代というのは,幸福なのか,不幸なのか。この夜は,いつまで続くのだろうか。




 
[2000.11.11]
  あなたは,なにを脱ぎ捨てるのか


 ▼ホットな番組『セックス・サバイバー』(WIRED NEWS)
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20001107204.html


 あなたは,なにを伝えるのか。あなたは,なにを脱ぎ捨てるのか。あなたは,なにを抱きしめるのか。

 11日に開始されるアダルト・サイト「セックス・サバイバー2000」は,乱交パーティーをストリーミングビデオで鑑賞できるもの。70ドルを支払う視聴者は,ポルノ映画のようなシーンを絶え間なく観ることができる。そして,出演者の生き残りの投票をする。最後まで生き残った出演者には35万ドルの賞金が出る。超売れっ子でなければ大した収入を持たないポルノ女優は,美容師の資格を取る,会社を立ち上げるなどの希望を,その賞金にかけている。

 飲み屋で知りあいになったAV女優のエッちゃんにこの話を聞かせると,う〜ん,面白いけど,いつもカメラが回っているのは耐えられないかも,と云う。「でも,その賞金は,気になるわよね」。彼女は,なんでそんなにお金が欲しいのかと訊かれると,そりゃあったほうがいいでしょ,といつも軽くいなしているが,実際ははっきりとした目的があるようだ。訊いても絶対に話さないのが,逆にそれを明確にしている。

 ネットワークは,それぞれの接続者が,自分の持っているなにかをネットワークの流れに乗せることで,成り立っている。それはたった1行の発言かもしれないし,誰も興味を持たないような自分だけのカルトな知識かもしれないし,または,自分の「肉体」と「欲望」であるかもしれない。どんなストリームであろうと大した違いはなく,役に立つものである必要もない,善いことである必要もない。それが,リアル・ワールドよりもリアルっぽさを出している理由だ。「私の中ではAVは日常とは別だから,何日間も自分をみられるなんてのはごめんだけど,あたしの話を聴いてくれる人がいてくれたら,うれしいかも。AVに出てるというだけですぐにそういう目で見られるけど,そこでなら,そんな先入観もないだろうし。体よりも深く,知ってくれるのだとしたら,ちょっとだけ,うれしいかも」。




 
[2000.11.09]
  世界タービンを全速で回せ


 ▼衛星を使った高速双方向ネット接続がスタート(WIRED NEWS)
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20001107302.html


 世界システムを稼働させろ。世界タービンを全速で回せ。マグナム・グラム機のモーターのイカズチを,エンジンブローで響かせろ。ザナドゥのマホロ神が,降臨する地こそ,地球なのだ。

 スターバンド・コミュニケーションズ社は,衛星で送受信できる高速なインターネット接続サービスを,今週から商用サービスとして提供することになった。実用的な双方向サービスとしては最初のものとなる。だが,イリジウムの二の舞いになる可能性や,優先サービスよりも傍受しやすいセキュリティーの提供の問題などもある。

 19世紀末の発明家,「電気の天才」「交流の父」とも称されるニコラ・テスラは,地球がなんらかの定常波を持っていることと見出した。そして,その定常波に乗せて,膨大な情報や,電気エネルギーを配送することができたら…と思い至る。彼はそれを「世界システム」と呼んだ。発電所も送電線もいらずに,世界中にエネルギーを配給し,そして情報,知の共有ができる。その計画の実験は,あまりの壮大さと,戦火によって途絶えた。テスラが発見したその地球の定常波は,現在では「シューマン共鳴」として知られている。地球が自ら持ち,地球全体を覆っている,脳波に近い7.83Hzの低周波。いわば,「地球の脳波」だ。なぜ,このような定常波を地球が携えているのか,明確な答えはない。

 テスラの考えた世界システムは,電力の話は置いておいて情報に関して云えば,ひとつの理想ともなる。有線を必要としないことでどんな僻地でも,どんな悪天候の下でも,容易にアクセスが可能となるのだ。ザナドゥ構想を経て(過去記事),現在のワイヤードが欲しているパラダイム。衛星という手段は,日本では目が・ウェーブの失敗(Nikkei BizTech News!の記事)があったりしてあまり信用にたらないが,その理想に近いものがある。アマゾンの奥地でも,ペルーの高地でも,地球はどこでもつながりを与えてくれる。いざ,世界システムを,世界タービンのスイッチを,ON。(参考:発明超人ニコラ・テスラ




 
[2000.11.08]
  スピード


 ▼バグの拡散もインターネットスピードで?(ZDNet News)
  http://www.zdnet.co.jp/news/0011/06/bug_m.html


 頭の中が,地球の自転の300倍で回り続ける。胸の鼓動が,光を追い抜く。見えない君へとボリュームをあげて,誰も追いつけないスピードで,明け方の虹までドライブ。

 アンチウイルスソフトの自動更新システムが,大惨事の元凶になりはしないだろうか? ネットワークアソシエイツ社のアップデートで250台のマシンが丸一日使えなくなったという報告や,シマンテック社のアップデートがファイヤーウォールを無効にしてしまったという報告もある。速ければ速いほうがいいウイルス更新ファイルのアップデートだが,アンチウイルスソフトメーカーが,ミスを世界規模の問題に発展させてしまうこともある。

 世間を騒がせたメリッサやラブ・バグのスピードは,驚異的だった。メリッサは半日でMSをはじめとする米国企業20社に大打撃を与え,3日で世界中に蔓延した(過去記事)。ラブ・バグでは,2日で世界を恐怖に陥れ,米国では1200万人がラブ・バグを受け取っていた(過去記事)。アンチウイルスメーカーは,ともに当日中にソフトを対応させたが,光よりも速く,世界を駆け抜けたウイルスをとどめる術はなかった。

 うわさ話も,迷惑な広告も,皆の声援や歓喜も,たった一人が発した批判も,すべてがとてつもいなスピードを持ち,海を渡り,空を走り,百万人の脳に銃声を響かせる。宇宙よりも遠いところにあるはずの,あの人の心の底にまで,まるで薬で跳んだ正気のように,ダイブ。まともなことなどなにもない,このスピードこそ,ワイヤードの秒針だ。




 
[2000.11.07]
  なんのために,ハッキングするのか?


 ▼「中東オンライン戦争」が激化、在米サイトも攻撃される(WIRED NEWS)
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20001106204.html


 あなたは,なんのために,ハッキングするのか? と,問われて。

 パキスタンのクラッカーが,米国の親イスラエル団体のウェブサイトを攻撃,クレジット番号や会員記録などを盗み出した。現在,ハッキングと政治的行動主義を混合した,ハックティビズムが活発化している。ハックティビズムは容易に抗議行動ができ,しかもセキュリティー対策の手ぬるいサイトはたくさんある。

 過去記事もあ〜る。もともと,ハッカーやクラッカーなんて徒党を組むこともなく,また悪を倒すとか,正義を守るとか,自国のためにとか,敵国を打ちのめすためとか,そんな理念とはかけ離れたところに存在する,という考えがあったのだが,どうもそうともいいきれなくなっているのか。ハッカーの元祖的なケビン・ミトニックは,なぜハッキングしたのか? と問われて,挑戦,知識の探求,好奇心と冒険心などをあげる(NetLifeの記事)。自らの心を満たすため,それがハッキングの唯一の目的。

 だが,自分の心のためにたたくキーボードは,戦争に奉仕する心によってもたたかれることもあるのだろう。守るに値する国家を持つ者にとっては,自らの手のひらが作るコマンドとオーバーフローデータが,パトリオットの瞬きとなる。まっ,シガー1本ほどの価値もない国に居る者にとっては,自分の満足がすべて,と,この世界で生きているわけだが,世界にはそうでないところもあるということに,やっぱり驚いてしまうのココロ。




 
[2000.11.06]
  古びた机を捨てること


 ▼Toppling the Desktop(Technology Review)【英語】
  http://www.techreview.com/articles/nov00/montfort.htm


 ジョブズは,「マッキントッシュ」という言葉を,もう使わない。目の前にある装置は「マック」であり,「マッキントッシュ」ではない,という考えだ。そして,マッキントッシュOSはうち捨てられ,マックOSの登場。それが,マックOS Xとも云える。だか,人々はまだ,マッキントッシュOSへの依存から逃れられずにいる。

 マックOS Xによって,PCのデスクトップの見た目は征服されるかもしれない。アクアに彩られたOS Xを起動させたとき,デスクトップにそれほど急進的な変化は感じないが,よくよくみるとそれはあまり“机的”ではない。それは,新しいシステムであることがわかる。マッキントッシュの歴史に16年間なかったコマンドラインもある。

 マックOS Xのベータ版が使いにくいという意見は,おおむね,既存のマックOSへの「依存」だ。OS9までのシステム(ファインダー)は,忠実にリアルの机上(デスクトップ)をトレースしていた。ウインドーの使い方や,ひとつひとつのファイルの扱い方が,現実の机の引き出しやメモやノートのように感じるように,作られていた(ウインドウズは,DOSのシステムに現実の机の様式だけをかぶせたから使いにくかった)。その,トレース具合は,気持ちいいくらいわかりやすいもので,そんなシステムだからこそ,コマンドラインなんてあるはずがなかった。……そして今,マックOS Xは,OS9のデスクトップを,あっさりと捨てた。

 ユーザーの混乱は当然といえば当然だ。新しいノート(ディスク)を取り出したのに,そのノートが机の上に現れない(マウントされない)。アップルはそれを改善した。OS9の机的要素に戻した。箱(フォルダ)の中の箱を開けたのに,元の箱の中に中身が表示される。今までは別のフォルダで表示されていたのに,ということで,OS9と同様に別のフォルダで中身が表示されるようなオプションを加えた。人々のマッキントッシュ机に対する愛着の強さが,マックOS Xのシンプルさを歪めている。それでは,ウインドウズと同じになってしまうだろう。OS Xを使うのであれば,今まで使っていた机を捨てること,が,大事。新しい世界において,過去への依存は,病でしかない。




 
[2000.11.05]
  ワイヤード戦争論の序章


 ▼パレスチナとイスラエル ネット上でも続く衝突(CNN.co.jp)
  http://www.cnn.co.jp/2000/TECH/11/03/mideast.webwar/index.html


 戦争というには,まだあまりにも幼稚な戦いが,起きている。まるで子供同士の殴り合いのような様相だが,次第により組織的な攻撃へと進化し,本当の戦争論が必要となる。今はまだ,その序章だ。

 イスラエルとパレスチナの衝突が,双方のウェブサイトの不正侵入,破壊活動に飛び火している。アラブ寄りの何者かは,イスラエル政府のサイトを2日間接続不能にし,パレスチナのプロバイダーは,顧客を守るための防衛策の必要に迫られている。

 この記事の話は,FBIが米国にも影響が出るかもしれないと警告(ZDNet Newsの記事),その矢先にイスラエルで事業展開しているルーセント・テクノロジーズ社がサイト攻撃される,とつながってきた(CNET Japanの記事)。サイバー戦争という言葉はあまりにも安易だが,実際に国家同士がネットワーク上で攻撃しあうというのはあまり例がない(といっても今回も政府同士が攻撃しているわけではないが)。台湾のクラッカーが中国政府サイトを攻撃したり(CNET Japanの記事),南京大虐殺を批判して日本政府のサイトを攻撃したような例があるが(過去記事),報復行為がなければ戦争にならない。中東の争いは,報復の繰り返しの様相となっている。これは,戦争だ。

 人間は多くの戦争を体験し,そのなかで組織として攻撃することが,もっとも効果的であると気付いた。兵器を組織し,人民を組織し,理論を組織して,戦いに挑む。だが,現代ワイヤードの,電子メールの無差別送信や,Dos攻撃は,まだ組織化されていない。そこがまだ,人々に,これが戦争であるという本当の恐怖を与えない理由だ。当然,このような戦争は進化し,より効率的な攻撃となる。政府組織の壊滅,情報の混乱,通信手段の断絶…。血が流れずとも,国家を滅ぼすことは,できる。




 
[2000.11.04]
  道半ば,道果てるまで


 ▼セガ、数字の実績を示す時期来ている(ZDII)
  http://www.zdnet.co.jp/zdii/reuters/0011/02/rtm_0063.html


 1年前(過去記事)。あのときと変わらないマイナスイメージのニュースが続く。不安と焦燥だけが,先走る。逃れる術が唯一あるとしたら,それは,…信仰心か。

 セガ社が1日に発表した事業計画を受け,アナリストは同社が数字の実績を示す時期に来ていると指摘した。ドリームキャストの開放や他ハードへのソフト開発における,提携先の発表もなく,危険を伴うハードウェアの処遇の中途半端さなどがみられる。計画やビジョンではなく数字を示すべき時期にあるとしている。

 セガの周辺がまた慌ただしい。すべては来年3月の最終損益が221億円の赤字になるとの警告によるもの。取締役の刷新(GAME SPOTの記事),他ハードへのゲーム供給の正式発表(ファミ通.comの記事),アミューズメント機器製造の矢口事業所閉鎖(セガのプレスリリース)と,なんとも気の重くなる話ばかり。特に,DCフォーマットをライセンス化し,PC上でDCソフトを動かせるPCIカードの発売,セットトップボックスへの普及などを目指すという発表は,受け取るのが難しい(ZDIIの記事)。セットトップボックスを目指すというと,落ち目のOSメーカーなどが手を出して,そのままフェードアウトというのがみられるし,現在とてつもなく安いDCを買わないPCユーザーが,PCIカードになったから買うかというのも疑問。それより,そのPCIカードの発売が来年の年末商戦ってそれまで現行DCを引きずるつもりか?

 ソフトのレンタル,@barai(アット・バライ)(過去記事),一般紙にも取り上げられるほどに最強のネットワークゲーム「ファンタシースターオンライン」(過去記事),携帯電話での主導権(過去記事)と目を引く見出しは並ぶが,即効性のあるものがないのも確か。セガが苦境の中で今すぐにでもできることは……,それは,ネットワークを信じることだ。持ち金が0円になる日まで。誇りやプライドを失い果てる日まで。その信仰心があれば,世界は必ず変えられる。今はまだ,その道半ば。道果てるまで,信じる心を,持てよ,捧げよ。




 
[2000.11.03]
  click, the fascinate tomorrow


 ▼マックもツーボタンマウスが標準に!?(WIRED NEWS)
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20001102302.html


 はたまた,マウスボタンをひとつですませるには,ソフトウェアの仕様をきちんと整える必要がある。ここでマルチボタンを使ってもらえばいいだろう…という逃げ道を利用する開発者は多い。その逃げ道も,退化のひとつだ。

 マックOS Xで,マルチボタンがサポートされていることから,アップル社がツーボタンマウスに移行するのではと噂されている。マック信者にとって,ワンボタンはエレガントなシンプルさの象徴だが,世界のパソコンの95%がツーボタンを採用している。ツーボタンは間違いなく,マックのインターフェースが自然に進化した結果なのだ。

 始めに書いておくと,WIRED NEWSの記事はガセだ(と思う)。たぶん,現在のアップルがマルチボタンマウスを出すことはないだろう。確かにマックOS Xでは,ココア上のAPIに,マウスアクションとして2つのスイッチが用意されている。だが,それをツーボタンに割り振る…,というのは安易な考えで,それらはゲームパッドやジョイスティックでの使用が考えられてのことであり,一般的なアプリケーションでは,ワンボタンで不自由がないように使ってね,というレベルだ。また,これは真偽のほどは疑わしいが,OS Xの土台部分であるダーウィンでは,32のボタンをサポートできる仕様になっているという(AppleInsiderの記事)。できる限り広範囲なサポートを埋めるようにしてあるが,それがすぐ製品の改良につながるわけではない。OS XをUNIXユーザーが積極的に使うような場合のために,ダーウィン用の3ボタンエミュレート・パッチなども作られているし(XFree86 on Darwin)。

 マルチボタンがワンボタンから進化して主流となったなんてのは間違いで,それは,便宜的な退化でしかない。ボタンなどないほうがいい,否,マウスなどなくなるべきだ。マウスとキーボードは決して優秀なインターフェイスではなく,人の手,体,脳が直接的なインターフェイスとなるまでの過程でしかない。そして,マルチボタンよりもワンボタンの方が,よりその未来に近く,また,インターフェイスとしてセクシーだ(肉体的という意味も含めて)。必要なのは,目の前にある便利さではなく,今,未来を魅惑させることだ。




 
[2000.11.02]
  禁断の果実の熟れた果肉


 ▼『Napster』のファンは音楽を購入せずに視聴するだけ?(CNET Japan)
  http://japan.cnet.com/News/2000/Item/001101-8.html


 手に取るべからずと戒めている禁断の果実なのに,その果肉は今食さなければ,誰かに食べられてしまう前に食べなければ,一生食べられなくなるかもしれない。ナップスターにとっての禁断の果実,BMGにとっての禁断の果実,ユーザーにとっての禁断の果実。ナップスターの周りには,今,芳しい香が渦巻いている。

 ナップスター社は31日,法廷闘争を繰り広げているBMGエンタテインメント社の親会社,ベルテルスマン社とパートナーシップを結んだ。ベルテルスマン社は,同社が著作権を持つ楽曲のファイル交換が可能な,有料加入サービスを開始することができたら,訴訟を取り下げるとしている。また,ベルテルスマン社傘下のオンラインCDストア「CDナウ」へのリンクを求めている。だが,ユーザーは,CDナウで音楽情報を入手し,ナップスターで無料で楽曲をダウンロードしている,という報告も出ている。

 ナップスターとBMGの提携,という報じられ方だが,内実はよくわからない。無料のファイル交換は維持するというナップスターCEO,ハンク・バリーの話もあり。BMGの楽曲に限って,著作権保護された会員限定の配信を行うシステムを作るという話もあり。結局は経営不振を脱しきれないCDナウの有効利用の起爆剤として,ナップスターを利用するという話もあり。ナップスターのプロトコルにどのような変更が加えられるのか,そしてソフトウェアになんの機能がつくのか,が,みえない状態だ。まっ,妥当な会員サービスをつくれれば,ナップスター社は,きちんとお金を流通させられる企業として,はじめて両足で立つことができる。果たして,ファニングがナップスターのコードをどのように書き換えるのか。それによって,ナップスターの今後もみえてくる。

 とりあえず,ワーナーやソニーやEMIなどに先駆けて,「禁断の果実」にいち早く手を出したBMGは,不安の中でもしてやったりの気分かもしれない。なにより,ファイル共有による音楽配布というカタチは,将来,生き残るための熟れた果肉だ。いつまでも未来を先送りしているよりは,飛び込んでしまったほうが楽だし,自分だけが生き残れることになるかもしれない。…さて,あとはユーザーだけだ。もし,月4ドル95セントでナップスターを使い続けられるとしたら,あなたは,それを払うだろうか?




 
[2000.11.01]
  ワイヤードの果て,魂の古郷


 ▼故人への思いを伝えるインターネット(CNET Japan)
  http://japan.cnet.com/News/2000/Item/001031-2.html


 君がいなくなって,どれほどの時が経っただろうか。雨の日,遠くで鳴り響く,救急車のサイレンの音,道路を静かに転がる,白い傘,君のハンカチに散る紅…。…僕は君を,想い出になどしない。そして僕は,ワイヤードの果てへと歩き続ける。

 故人に捧げる追悼サイトや,故人へと電子メールを送るネットワークが広がりをみせている。手書きのメッセージを風船に付けて飛ばすように,死者に電子メールが送られている。インターネットがなければ喪失感を表わすことができなかったであろう人たちにとって,インターネットは現代の奇蹟になっているといえる。そしてWWWは,現実世界とあの世を結ぶ象徴としての媒体になっている。

 死者からメールが届くというホラーのパラドックスは,ワイヤードこそ,いなくなった彼・彼女の存在する場所,という概念になる。死者の魂の古郷として,宇宙の果てよりも遠く広がりを持つワイヤードは,適当だ。「お空」の上の天国は,宗教観を持たないものにとっては子供だましの戯れ言にしか聞こえないが,ワイヤードの遠くに死者たちが眠るという観念は,新しい宗教たりえる。それは,なぜか?

 死者を生けるものとして我が想いとするのは,「想像力」だ。死に対する慟哭と憧憬が,人の想像力を培った。そして,人の「想像力」の塊として広がり続けるワイヤードは,同じ幹を持っている。もう,居ないはずのあなた,が生きていると感じさせる空間。ワイヤードの果てには,天国も地獄もある。君,に会うためにワイヤードの果てへと歩き続ける,僕は,ずっと。




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